からほり亭



空堀商店街界隈長屋再生プロジェクト

大阪谷町六町目にある空堀商店街。
「大阪のへそ」とか「大阪の下町中の下町」とかいわれるほどレトロな趣きが合う町である。
NHKのドラマの舞台にもなったという場所である。
もちろん逢坂の下町となれば坂があってしかりであり、盛り土をして作られた商店街を横切る道路は、
いきおい急勾配となり、買い物の自転車を弄んでいる。
空堀商店街は谷町筋を挟んで東西に分かれ、
この東側の商店街の通りから50mほど北に上がった路地奥「からほり亭」は位置する。
目立たない。
恐らくちょっとした地図なら記載されていないかもしれない路地である。
目立とう筈が無い。
しかし、である。
旨いものを求め歩く昨今の自称グルメ事情。立地の面白みは逆に店舗のインパクトを強め、
「探索」することでいやが上にも旨さへの追求のテンションは上がろうというものだ。
その期待を裏切ることなく「からほり亭」はしっかりと、そこにあるのだ。
土地には馴染みの薄いであろう、ややハイカラな外装。思い切って目立とうというものではなく、
そこはかとなくレトロな面持ちを取り入れながら、
「お客様に和んでただきたい」という心が表れている色調であり、形状だ。
小さなオープンテラス的な「玄関先」は東向きであり、昼の営業時間は日陰となり良好な会話場所だ。
昔であれば縁台将棋が似合う場所である。初老の主婦が集うに相応しい。
やや大きめの看板は商業的に必要であるが、
ここは心得たもので「本物感を損なわない字体と書体」はオーナーの姿勢を感じさせ、期待が膨らむ。
中に入ると決して高級感はなく、幅広のカウンターがドンと中心を構え、
右には小さな会合が出来そうなブースもある。
特筆は前記のカウンター。
中には焼台をはじめとする厨房機器を備え、周囲270度をお客に見られる「舞台」に似たカウンターである。
この「舞台」の中にオーナー二道氏が、奔放に料理を作り続けているのだ。
料理人二道はフランスの最高水準料理人アランサンドランスの元でその腕を磨いた経験を持ち、
間違いのない調理技術は材料の魂を潔い味に変えてゆく。
自慢は「魚」。魚介類と言って良いだろうか、
日本人が大好きな海老や蛸といった馴染み深い素材が料理人二道の手にかかり、
繊細さと豪快さで一点の曇りもない素直な料理となって卓にあがっている。
しかもこの卓。
先程カウンターと記したが盛付け台、専門用語でいうとディッシュアップ場を兼用している。
「なるほど!」と頷けるのは、幅広のカウンターの意味だ。
お客様の前で盛り付け、そのままの手で供することで、料理人とお客の間で視覚の会話が交わされる。
広いカウンターだからワインクーラーも置けるし、
大きなお皿でも、数多い皿でも自由自在に使うことができるという寸法となっている。
正に「二道氏の厨房」に入って料理を食べさせてもらっているような楽しみを感じさせているのだ。
素材を味わうだけの店なら何処にでもある。ここは違う。
下町の豊かな心を通い合せ、隣近所を大切にする心根に宿る「味」をスパイスに、
「大阪万歳な味」を洋食ジャンルで料理人二道が切り盛りしているからである。


公園に面した下町のフランス料理屋として開放的なテラスを設置した



特注照明は六波羅の製作



壁面は月貸ギャラリーとなっている
オープンキッチンではシェフの盛り付けやソースの模様の付け方まで望むことができる


六波羅真建築研究室のホームへもどる